【過去14年分析】総合(数学・物理・地学)の頻出単元とR9本番|どこを固め、どこを捨てるか
目次(15項目)
令和9年度(2026年7月12日実施)の第一次試験から、総合がCBT方式になり、出題範囲も明確化されました。R9総合全体は、Part Iが問1〜問4の4問(100点)、Part IIが問5〜問25の21問(150点)です。この記事では、航空大学校受験NETに掲載しているH26〜R08の13年分に、R9公式公開問題のPart II(Q5〜Q25)を追加して、設問単位で確かめます。R9のPart I(Q1〜Q4)は適性・処理能力の問題で、公式に問題が公開されていないため、この学科分析の集計には含めません。
結論は、R9本番でも数学・物理・地学の中心は旧13年の頻出領域から大きく外れませんでした。社会・時事はR9の公開Part IIにはなく、数Ⅲ・整数など範囲外の領域も確認できません。一方、数学は三角・指数対数・微積・図形・ベクトル、物理は力学・波動・熱・電磁気、地学は環境・大気が実際に出ています。以下、旧13年集計とR9本番を分けて見ていきます。
集計は当サイトの過去問解説に付した分野分類にもとづく設問単位の数字です。出題範囲は航空大学校 令和9年度学生募集要項にもとづきます。最新・正式な情報は公式の募集要項で確認してください。
【R9本番反映・下書き】 R9公式公開問題のPart II(Q5〜Q25)を反映しました。公式PDFではPart I(Q1〜Q4)は非公開で、Part IIのみが公開されています。以下のR9集計は、公開されたPart IIの主問題と(a)/(b)の解答単位を数えたものです。なお、R9公式問題はCBTで実施した内容を紙形式に編集したものです。出典:公式R9総合問題・R9年度募集要項
まず、配点の重心はどこにあるか
まず、H26〜R08の旧13年分にR9を足した、総合Part IIの科目別集計です。過去問の(a)/(b)はそれぞれ1つの解答単位として数えています。したがって、これは配点ではなく設問単位の構成比です。
| 科目 | 設問数(H26〜R09計) | 割合 |
|---|---|---|
| 数学 | 166 | 約41% |
| 物理 | 160 | 約40% |
| 社会・時事 | 49 | 約12% |
| 地学 | 27 | 約7% |
| 合計 | 402 | 100% |
数学と物理の2科目で、R9を含めても全体の約8割を占めます。旧13年に約13%あった社会・時事は、R9公開Part II(Q5〜Q25)には出ていません。R9で追加されたのは数学12、物理12、地学2の解答単位です。ただしPart Iは別の適性・処理能力パートなので、総合全体から「社会が完全に消えた」と言い切るのではなく、公開Part IIでは確認できなかった、と書くのが正確です。
R9の実際の出題(Part II・公開範囲)
| 科目 | 公式PDFの主問題 | (a)/(b)を含む解答単位 | 主な内容 |
|---|---|---|---|
| 地学 | Q5〜Q6 | 2 | 地球環境、天気図・大気の運動 |
| 物理 | Q7〜Q15 | 12 | 剛体・運動学・非慣性系・単振動・気体・波動・抵抗・コンデンサ・電磁誘導 |
| 数学 | Q16〜Q25 | 12 | 2次関数、三角・図形、方程式、指数・対数、微分・積分、円、ベクトル |
| 合計 | Q5〜Q25 | 26 | 社会・時事の主問題はなし |
このR9の26単位を旧13年の376単位に加え、上の402単位としました。年度をまたぐ単元の細かい分類は、下の旧13年図表とR9実出題表を突き合わせて読む必要があります。
物理:「運動学」と「電気回路」を軸に積み上げる
旧13年の物理148問をサブ単元まで分けると、攻めどころがはっきり出ます。下の図はR9を含まない歴史集計です。
大分類では力学(69問)と電磁気で全体の約8割。さらに小単元まで割ると、力学では花形の円運動・単振動より、運動学(等加速度・投射)が25問で最多。次いで剛体(力のモーメント・重心)が13問と続きます。まず運動学の基礎を固め、次に剛体を押さえる順序が効率的です。
電磁気は静電場まわり(コンデンサ・クーロン力・電位)で15問、直流回路で13問。この2本柱で電磁気の半分以上を占めます。電磁誘導や交流に手を広げる前に、ここを確実にしておくと得点が安定します。波動は「波の性質・弦(9問)」と「音・ドップラー(8問)」が半々、熱力学は気体の状態変化(9問)にほぼ集中(第一法則は薄い)しています。
そして原子分野は旧13年間で一度も出ていません。さらに範囲内でも、万有引力(惑星・ケプラー)・波動光学(光の回折/干渉)・電磁波は、いずれも旧13年間ゼロ。新範囲の「物理:原子を除く」は出題実態の明文化にすぎず、範囲内にも“まず出ない領域”があるのが実態です。
数学:軸は「指数・対数」「微積」「三角」「ベクトル」
旧13年の数学154問の単元別はこうです。下の図はR9を含まない歴史集計です。
指数・対数は旧13年連続、微積・三角関数・数と式も毎年のように出ます。ここが数学の得点源です。
注意してほしいのが微積の扱い。「微分・積分が消えた」と早合点する人がいますが、上の微積はほぼ数Ⅱの微積(多項式の接線・面積)で、これは引き続き出ます。範囲外になったのは数Ⅲの微積(極限・区分求積など)だけです。
R9本番を単元別に読む
公式公開PDFのPart IIを主問題番号で並べると、R9は「範囲が狭いから特定単元だけ」という出方ではありません。数学・物理とも複数単元を横断し、地学は募集要項どおり環境と大気に限られました。
数学:三角・指数対数・微積・図形・ベクトル
Q16〜Q25の10問は、次のように分類できます(Q17・Q22は(a)/(b)を含むため、解答単位では12)。
| 問題 | 分類 |
|---|---|
| Q16 | 2次関数の最大・最小とパラメータ |
| Q17 | 空間図形・三角比 |
| Q18 | 式の計算・連立方程式 |
| Q19 | 三角方程式 |
| Q20 | 指数方程式 |
| Q21 | 対数 |
| Q22 | 微分・接線 |
| Q23 | 絶対値を含む定積分 |
| Q24 | 円・弦を使う図形 |
| Q25 | 平行四辺形のベクトル |
R9で実際に出た範囲は、旧13年で優先してきた指数・対数、三角、数Ⅱの微積、図形、ベクトルと重なります。数学だけを見ても、単元を一つに絞るより、典型問題を広く解いて計算の切り替えを速くするほうが本番向きです。
物理:力学から電磁気まで横断
Q7〜Q15の9問は、剛体・運動学・非慣性系・単振動・熱・波動・電気回路・コンデンサ・電磁誘導でした。解答単位ではQ8・Q10・Q12の(a)/(b)を分けて12単位です。
R9は、旧13年で多かった運動学・剛体・静電場・回路を含みつつ、単振動、気体、閉管の共鳴、電磁誘導も一度に出ています。旧13年の頻出順は優先順位として使えますが、「運動学だけ」「直流回路だけ」のように狭く切る根拠にはなりません。
地学:環境と天気・大気
Q5は地球環境、Q6は天気図と大気の運動に関する問題でした。R9の地学2単位は、募集要項の「地球の環境」「大気の構造と運動に限る」という範囲に沿っています。
試験再現・感想板から見えるR9の受験者報告
R9一次試験の試験再現・感想板は、2026年8月25日時点で85件の公開投稿があります。内訳は総合I(適性)3件、総合II(学科)45件、英語3件、全体の感想34件。これは投稿数であって人数ではなく、質問・返信・同じ内容の再投稿を含むため、正答率や全体の難度を測る統計ではありません。
Part Iについては、複数の投稿で「六角形・ハニカム構造の周りの長さ」「損益分岐」「立方体のカット」「図表の読み取り(レッスン)」というタイプが挙がりました。問題数については記憶違いが混ざりやすいため、Part Iは問1〜問4の4問として公式表記を採用し、板の再現はタイプの参考にとどめます。
Part IIでは、天気図・地球温暖化、抵抗・電磁誘導・コンデンサ、ばね・熱力学・音波・モーメント・斜面、指数・対数・三角と円・ベクトル・絶対値付き積分などについて、受験生が記憶を持ち寄っていました。これは公式PDFで確認できる分類を補強する材料にはなりますが、解答番号には食い違いもあります。記事の単元分析は公式問題を正とし、板の投稿は「本番でどの単元が印象に残ったか」の参考として扱います。
難度については、「問題数が減って時間に余裕があった」「物理・数学は易しかった」という投稿と、「ところどころ難しい」「上位層の得点帯は例年どおり」という投稿が混在しています。受験生の体感は割れているため、R9全体が易化したとは断定せず、範囲内の複数単元を時間内に処理する練習を勧めます。
今年の「範囲明確化」をデータで答え合わせする
ここが本題です。新範囲で「対象外」と明記された分野を、旧13年の実出題とR9の公開Part IIに突き合わせます。公式募集要項の学科範囲は、数学I(データの分析を除く)・数学II・数学A(図形の性質のみ)・数学C(ベクトル)、物理基礎+物理(原子を除く)、地学基礎(地球の環境)+地学(大気の構造と運動のみ)です。
| 新範囲で「対象外」とされた分野 | 旧13年の実出題 | 実態 |
|---|---|---|
| 数A 場合の数・確率 | 0問 | もともと出ていない(追認) |
| 数B(数列・統計的推測など) | 0問 | もともと出ていない(追認) |
| 数Ⅰ データの分析 | 0問 | もともと出ていない(追認) |
| 物理 原子 | 0問 | もともと出ていない(追認) |
| 数Ⅲ(極限・区分求積など) | 5問/4年 | 実際に出ていた=実質的な削減 |
| 整数(数A 数学と人間の活動) | 4問/4年 | 実際に出ていた=もう一つの実質的な削減 |
確率・数列・データの分析・物理の原子は、旧13年間で出題ゼロ。新範囲はこれらを公式に対象外としました。R9公開Part IIでも、数学はQ16〜Q25、物理はQ7〜Q15、地学はQ5〜Q6の範囲内に収まっています。逆に言えば、これまで出ていなかった分野まで広げる必要はありません。
旧形式の対策をしてきた人にとって、旧13年の実績上、実際に減るのは数Ⅲと整数(数A)の2分野(合わせて9問)です。それ以外の頻出単元は、R9本番でも出ています。「範囲が絞られたから簡単になった」と決めつけるより、出題範囲を正確に線引きし、範囲内の標準問題を広く固めるのが安全です。
地学も同じ構図です。旧13年分の地学25問は、台風・前線・エルニーニョ・天気図・フェーン現象(=大気の構造と運動)か、温暖化・オゾン・酸性雨・炭素循環・PM2.5(=地球の環境)のどちらかに収まり、R9も環境と天気・大気でした。新範囲の「大気の構造と運動/地球の環境に限る」は、出題実態と整合しています。
過去問はこう使う:解く問題・飛ばす問題
以上を踏まえると、過去問の使い方は明確です。各年度の解説の冒頭にある「正解一覧(早見表)」には設問ごとに分野タグが付いているので、これを見て次のように仕分けてください。
優先度を下げてよい(R9公開Part IIでは対象外)
- 旧過去問の社会・時事・政治の問題(R9公開Part IIでは確認できず。Part Iの適性・処理能力とは別)
- 数Ⅲの問題(極限・区分求積・積分と極限・双曲線下の面積)
- 整数の問題(記数法・n進法・約数など=数A「数学と人間の活動」。新範囲の数Aは図形の性質に限る)
必ず固める(旧13年+R9で確認できた範囲)
- 物理:運動学・剛体・単振動・熱・波動、電気回路・コンデンサ・電磁誘導。まず運動学と回路を優先
- 数学:指数・対数、数Ⅱの微積、三角関数・三角比、数と式、ベクトル、2次関数、円・図形の性質
- 地学:大気(台風・前線・低気圧・天気図)と地球環境(温暖化・オゾン・酸性雨・炭素循環)
ちなみに、難易度の内訳として本文にある「標準」「やや難」各4割前後、「難」約13%は、旧13年の物理・数学に対する分類です。R9は受験生1名の主観的な報告を除き、全体の正答率データは確認できません。基礎だけでなく、標準〜やや難の典型問題を取りこぼさないという旧傾向を、R9後の学習方針として使うのが妥当です。
どの順番でやるか
物理と数学はどちらも主役で、優先度に差はありません(設問数もほぼ同じ)。両方を早めから並行で進めるのが現実的です。強いて入り口を挙げるなら、範囲が縮んで「やる範囲」を線引きしやすい数学から手をつけ、そのまま物理と並走させると見通しが立ちます。
地学は後半でかまいません。範囲が大気と地球環境に絞られ、中身もほぼ暗記なので、直前期に詰め込んでも間に合います。むしろ早くやると忘れます。
適性パート(規則性・空間認識・資料読取)は過去問解説の蓄積が少ないぶん、順番というより、早めに一度CBT形式に触れておくのが対策になります。
英語は別枠、でも一番手を止めちゃいけない
この記事は総合(学科)の話ですが、英語(100点・リスニング約20分+リーディング65分)にも一言。順番でいえば、本当に早く始めるべきなのは英語です。語彙も読解もリスニングも、数学・物理以上に積み上げがものを言い、直前の詰め込みがまず効きません。CBTではリスニングを先に解いてからリーディングに進み、あとで戻れない形式なので、耳の慣らしも含めて早めに手をつけておくこと。総合の対策と並行で、英語だけは毎日続けてください。
年度別の解説(学科パート=総合Part II)
新しい年度ほど今の傾向に近いので、R08から順にさかのぼるのがおすすめです。各年度の早見表で、上の「飛ばす/固める」を実際に仕分けながら解いてみてください。
- 令和9年度(R09)総合Part IIの詳しい解説・公式総合問題(Part II)
- 令和8年度(R08)総合Part II 解説
- 令和7年度(R07)総合Part II 解説
- 令和6年度(R06)総合Part II 解説
- 令和5年度(R05)総合Part II 解説
- 令和4年度(R04)総合Part II 解説
- 令和3年度(R03)総合Part II 解説
- 令和2年度(R02)総合Part II 解説
- 平成31年度(H31)総合Part II 解説
- 平成30年度(H30)総合Part II 解説
- 平成29年度(H29)総合Part II 解説
- 平成28年度(H28)総合Part II 解説
- 平成27年度(H27)総合Part II 解説
- 平成26年度(H26)総合Part II 解説
本番前にCBTを一度は触っておく
今回からはコンピューターで解くCBTです。画面をスクロールしながら解く感覚は、紙の過去問だけだと本番でつまずきます。一度でいいので形式に慣れておきましょう。サンプル模試(総合Part 1 10問)は登録不要で受験ができるので、受験前に一度受けてみてください。なお、公式のPart I問題は非公開なので、この模試を本番問題の再現とみなさず、画面操作と時間配分の練習として使うのが安全です。
※図中の数学154問・物理148問・地学25問などは、R9追加前のH26〜R08(旧13年)の歴史集計です。R9本番の公開Part IIは、主問題と(a)/(b)を解答単位に分けて数学12・物理12・地学2を追加しました。R9のPart Iは公式非公開のため、総合全体の難度・平均点・適性の出題傾向は本稿では断定していません。範囲は公式の令和9年度募集要項、問題は公式R9総合問題を参照しています。試験再現・感想板の投稿は参考情報であり、統計ではありません。
