【過去13年分析】総合(数学・物理・地学)の頻出単元とR9新範囲|どこを固め、どこを捨てるか

目次(9項目)

令和9年度(2026年7月12日実施)の第一次試験から、総合がCBT方式になり、出題範囲が明確化されました。「範囲が狭くなった=楽になった」という声もありますが、本当にそうなのか。航空大学校受験NETに掲載している過去13年分(H26〜R08)の総合Part II解説を、設問単位ですべて分類して確かめてみました。

結論から言うと、今回の範囲明確化のほとんどは「もともと出ていない分野」を正式に外しただけで、実際に出題されていたのに削られたのは数Ⅲのごく一部だけです。つまり、これまでの対策の中身は基本的に変わりません。以下、データで見ていきます。

集計は当サイトの過去問解説に付した分野分類にもとづく設問単位の数字です。出題範囲は航空大学校 令和9年度学生募集要項にもとづきます。最新・正式な情報は公式の募集要項で確認してください。

まず、配点の重心はどこにあるか

13年分の総合Part IIを科目別に分けると、こうなります。

科目設問数(13年計)割合
数学154約41%
物理148約39%
社会・時事49約13%
地学25約7%

数学と物理の2科目で全体の約8割を占めます。注目したいのは、約13%あった社会・時事が今回まるごと削除されたこと。暗記でしのいでいた時事対策から解放され、その時間を学科に回せます。範囲明確化のなかで、受験生の負担が実際に軽くなる数少ない変更です。

物理:「運動学」と「電気回路」を軸に積み上げる

物理148問をサブ単元まで分けると、攻めどころがはっきり出ます。

物理:サブ単元別の出題数(過去13年)

大分類では力学(69問)と電磁気で全体の約8割。さらに小単元まで割ると、力学では花形の円運動・単振動より、運動学(等加速度・投射)が25問で最多。次いで剛体(力のモーメント・重心)が13問と続きます。まず運動学の基礎を固め、次に剛体を押さえる順序が効率的です。

電磁気は静電場まわり(コンデンサ・クーロン力・電位)で15問、直流回路で13問。この2本柱で電磁気の半分以上を占めます。電磁誘導や交流に手を広げる前に、ここを確実にしておくと得点が安定します。波動は「波の性質・弦(9問)」と「音・ドップラー(8問)」が半々、熱力学は気体の状態変化(9問)にほぼ集中(第一法則は薄い)しています。

そして原子分野は13年間で一度も出ていません。さらに範囲内でも、万有引力(惑星・ケプラー)・波動光学(光の回折/干渉)・電磁波は、いずれも13年間ゼロ。新範囲の「物理:原子を除く」は出題実態の明文化にすぎず、範囲内にも“まず出ない領域”があるのが実態です。

数学:軸は「指数・対数」「微積」「三角」「ベクトル」

数学154問の単元別はこうです。

数学:単元別の出題数(過去13年)

指数・対数は13年連続、微積・三角関数・数と式も毎年のように出ます。ここが数学の得点源です。

注意してほしいのが微積の扱い。「微分・積分が消えた」と早合点する人がいますが、上の微積はほぼ数Ⅱの微積(多項式の接線・面積)で、これは引き続き出ます。範囲外になったのは数Ⅲの微積(極限・区分求積など)だけです。

今年の「範囲明確化」をデータで答え合わせする

ここが本題です。新範囲で「対象外」と明記された分野を、過去13年の実出題と突き合わせます。

新範囲で対象外とされた分野の過去13年出題数

新範囲で「対象外」とされた分野過去13年の実出題実態
数A 場合の数・確率0問もともと出ていない(追認)
数B(数列・統計的推測など)0問もともと出ていない(追認)
数Ⅰ データの分析0問もともと出ていない(追認)
物理 原子0問もともと出ていない(追認)
数Ⅲ(極限・区分求積など)5問/4年実際に出ていた=実質的な削減
整数(数A 数学と人間の活動)4問/4年実際に出ていた=もう一つの実質的な削減

確率・数列・データの分析・物理の原子は、13年間で出題ゼロ。新範囲はこれらを「やらなくていい」と公式に保証してくれた、というのが実態です。逆に言えば、これまで出ていなかったのだから、この明確化で楽になった部分はほとんどありません。

旧形式の対策をしてきた人にとって、新範囲で実際に減るのは数Ⅲと整数(数A)の2分野だけ(合わせて13年で9問、平均すると年0.7問程度)。それ以外の頻出単元は、これまでどおり全部やる必要があります。「範囲が絞られたから簡単になった」は誤解です。出るところは、ほとんど変わっていません。

地学も同じ構図です。13年分の地学25問は、台風・前線・エルニーニョ・天気図・フェーン現象(=大気の構造と運動)か、温暖化・オゾン・酸性雨・炭素循環・PM2.5(=地球の環境)のどちらかに収まります。新範囲の「大気の構造と運動/地球の環境に限る」は、ここでも出題実態の追認です。

過去問はこう使う:解く問題・飛ばす問題

以上を踏まえると、過去問の使い方は明確です。各年度の解説の冒頭にある「正解一覧(早見表)」には設問ごとに分野タグが付いているので、これを見て次のように仕分けてください。

飛ばしてよい(新範囲では出ない)

  • 社会・時事・政治の問題(出題削除。13年で約13%を占めていた分がまるごと不要に)
  • 数Ⅲの問題(極限・区分求積・積分と極限・双曲線下の面積)
  • 整数の問題(記数法・n進法・約数など=数A「数学と人間の活動」。新範囲の数Aは図形の性質に限る)

必ず固める(13年データの頻出=今後も出る)

  • 物理:運動学と電気回路(コンデンサ・直流回路)を最優先、次いで剛体・波動・熱力学
  • 数学:指数・対数、数Ⅱの微積、三角関数・三角比、数と式、ベクトル、2次関数、数A図形の性質
  • 地学:大気(台風・前線・低気圧・エルニーニョ)と地球環境(温暖化・オゾン・酸性雨・炭素循環)

ちなみに難易度の内訳は、物理・数学の設問で「標準」と「やや難」がそれぞれ4割前後、「難」が約13%、「基本」はごくわずか。基礎だけでは満点は取れません。標準〜やや難をどれだけ取りこぼさないかが勝負になります。

どの順番でやるか

物理と数学はどちらも主役で、優先度に差はありません(設問数もほぼ同じ)。両方を早めから並行で進めるのが現実的です。強いて入り口を挙げるなら、範囲が縮んで「やる範囲」を線引きしやすい数学から手をつけ、そのまま物理と並走させると見通しが立ちます。

地学は後半でかまいません。範囲が大気と地球環境に絞られ、中身もほぼ暗記なので、直前期に詰め込んでも間に合います。むしろ早くやると忘れます。

適性パート(規則性・空間認識・資料読取)は過去問解説の蓄積が少ないぶん、順番というより、早めに一度CBT形式に触れておくのが対策になります。

英語は別枠、でも一番手を止めちゃいけない

この記事は総合(学科)の話ですが、英語(100点・約85分)にも一言。順番でいえば、本当に早く始めるべきなのは英語です。語彙も読解もリスニングも、数学・物理以上に積み上げがものを言い、直前の詰め込みがまず効きません。CBTではリスニングを先に解いてからリーディングに進み、あとで戻れない形式なので、耳の慣らしも含めて早めに手をつけておくこと。総合の対策と並行で、英語だけは毎日続けてください。

年度別の解説(学科パート=総合Part II)

新しい年度ほど今の傾向に近いので、R08から順にさかのぼるのがおすすめです。各年度の早見表で、上の「飛ばす/固める」を実際に仕分けながら解いてみてください。

本番前にCBTを一度は触っておく

今回からはコンピューターで解くCBTです。画面をスクロールしながら解く感覚は、紙の過去問だけだと本番でつまずきます。一度でいいので形式に慣れておきましょう。サンプル模試(総合Part 1 10問)は登録不要で受験ができるので、受験前に一度受けてみてください。

航空大学校受験NET 模試(CBT版)

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