航空大学校の英語 完全分析|構成・英検レベル・出題分野・対策
目次(14項目)
「航空大学校の英語、何から手をつければ?」 この記事では配点・レベル・出題分野を、令和2〜8年度(R02〜R08)の過去問を一語ずつ分析し、対策まで1ページにまとめました。まずは全体像から。
- 構成:リーディング(大問I〜III)80点+リスニング20点。学校が自前で作るのは大問Iの語句だけ
- レベル:英検2級が前提、勝負は準1級、1級レベルの単語は捨ててよい
- 分野:大問Iは語彙・語法・時制で約6割。近年、大問Iのイディオム問題は減ったが、大問IIには残っている
英語の構成と配点
リーディング70分(大問I=語句20点/大問II=長文空所30点/大問III=長文和訳30点)+リスニング約20分(20点)の計100点です。このうち大問II・III とリスニングは市販物・ニュース記事からの出題で、著作権の関係から公式問題冊子でも「問題文は掲載いたしません」と伏せられています(本サイトも本文は扱いません)。過去問としてそのまま検討できるのは、学校オリジナルの大問I(語句)だけ。以下の分析も、まずこの大問Iが軸になります。
英検でいうと何級?(読む語と問われる語)
過去問の語を「本文で読む語」と「設問で問われる語」に分けると、レベルが大きく違います。
- 読む語(長文本文の単語):英検 2級までで約88%。準1級以上は約12%で、その多くは
contrails(飛行機雲)・pandemic・denialistのような時事・専門語です。長文は2級の語彙力があれば“だいたい読める”。 - 問われる語(語句問題の答え):準2級・2級・準1級に広く散らばり、全体では準1級以上が44%。ただしこの44%は大問I・IIをまとめた数字で、難語は大問Iに偏っています(大問別の内訳は次節)。
出題者は、本文の「やさしい語」ではなく「難しい語」を選んで問います。「長文はなんとなく読めるのに点が取れない」のはこのためで、読解力(2級)と、得点に直結する語彙力(準1級)は別物です。
どうやって測ったか
- 対象:大問I(語句)は全7年度70問。大問II(長文空所)と長文本文はR02〜R06(R07・R08の長文は非公開)
- 基準:SVL12000(アルク標準語彙水準)。全12,000語を12段階に分けた定番リストに、過去問の語を原形(lemma)で一語ずつ照合
- 英検への換算:
| SVLレベル | 英検の目安 |
|---|---|
| 1〜3 | 中学〜3級 |
| 4 | 準2級 |
| 5〜6 | 2級 |
| 7〜9 | 準1級 |
| 10〜12 | 1級 |
| 圏外(12000語に無し) | 1級超/専門語 |
英国綴りは米国綴りに正規化し、固有名詞・略語は除外、出現頻度で明らかなノイズも除いています。SVLは古いデータ由来で一部の語を高めに格付けするため、頻度と照らして数語だけ補正しました。
※レベルはあくまで目安です。本分析は航空大学校受験NETによる独自集計で、公式発表ではありません。
大問I・II・III、難しさの「質」が違う
同じ「英語」でも、大問ごとに難しさの種類がまるで違います。R02〜R06の本文と全7年度の答えを大問別に集計し直すと、こうなります。
| 読む語(本文)2級まで | 問われる語 準1級以上 | 難しさの正体 | |
|---|---|---|---|
| 大問I(語句) | 本文なし(単独文) | 約6割(61%) | 単語そのもの。文脈の助けが薄く、知っているかどうか |
| 大問II(長文空所) | 約9割 | 約3割(31%) | 読解。本文は2級で読め、空所も文脈で取れる |
| 大問III(長文和訳) | 約9割 | 選択肢なし(記述式) | 構文+訳出。語は易しいが和訳の正確さで差 |
- 大問I(語句):10問のうち語彙はおよそ2〜3問、残りは文法・語法です。その語彙の答えは準1級以上が約6割(
exempt・adjacent・comprehensive・incorporateなど)で、3大問のなかで単語の難度がもっとも高いセクションです。文法・語法問題は、答えがfor・whichのような易しい語でも文法知識を直接問います。単独文のため、文脈の助けがありません。 - 大問II(長文空所):本文は2級で約9割読めます。空所で問われるのは語彙が中心で、
account for・make upのような熟語・句動詞や、機能語・文法も混じります(内訳は大問IIで問われる単元)。多くは前後の文脈から絞り込めるぶん、大問Iより取りやすい構成です。 - 大問III(下線部和訳):使われる語のレベルは大問IIとほぼ同じ(2級で約9割)。難しさは単語ではなく、下線部の構文(関係詞・分詞・倒置)を崩さず日本語にする記述力と、航空テーマの専門語(
contrails・emissions・turbulence)にあります。
※「準1級以上44%」は大問I・IIをまとめた数字でした。大問別に割ると、難語は大問Iに集中し、大問IIの空所はぐっとやさしくなります。割合はSVL12000準拠の独自集計(本文=走り語ベース、答え=正解語ベース)で、目安です。
過去問の単語を英検レベルで並べると
語彙のレベル感を、実際の過去問の単語で確かめます(はしご図は下=やさしい、上=難しい。大問I・II・長文すべてから採っています)。
comprehensive・incorporate・adjacent・exempt あたり(準1級)を「見たことある」と言えるかが、得点の分かれ目です。diatribe(痛烈な非難)・placid(穏やかな)まで来ると1級超で、出題は数%。ここは深追いせず、文法と準1級を固めるほうが点になります。
出題分野(大問I)
大問I(70問)を分野で分けると、上位3分野(語彙23%・前置詞語法イディオム20%・動詞の形/時制19%)だけで約6割。残りは疑問詞・名詞・関係詞・仮定法・倒置などの文法単元が、それぞれ数%ずつ広く分布します。
難単語に目が行きがちですが、単語の意味そのものを問う「語彙」は約4分の1(23%)。残りの約4分の3は文法・語法・構文で、なかでも「動詞の形・時制」と「前置詞・語法・イディオム」が中心です。
どの単元が出る?(大問Iの内訳)
大問Iを単元レベルまで分けると、特定単元への集中はなく「広く薄く」です。各単元はおおむね1〜2問ずつ。ヤマを張れない=穴を作らない網羅学習が効くタイプ。厚いのは「動詞・時制系」と「前置詞・語法系」です。
| 大分野 | 問数 | 実際に出た単元 |
|---|---|---|
| 語彙 | 16 | 単語の意味(準1〜1級中心)、コロケーション(blow a tire) |
| 前置詞・語法・イディオム | 14 | 動詞+前置詞(graduate/qualify for)、形容詞+前置詞(anxious/desperate/exempt)、群前置詞・慣用句(in favor of/in short supply/anything but/unless otherwise)、句動詞(get on with)、be worth+名詞、口語(For here or to go) |
| 動詞の形・時制 | 13 | 三単現・be動詞・主述の一致、現在完了、時制の一致(歴史的事実)・並列、時の副詞節中の現在形、未来進行形、受動態(be located)、不規則動詞(cost)、疑問文(do) |
| 疑問詞 | 5 | How+形容詞(long/large/天候)、Who…for(前置詞残留)、What's |
| 名詞・代名詞・品詞 | 5 | 不可算名詞(traffic/a piece of advice)、非人称のit、否定の代名詞(Nobody)、品詞識別 |
| 接続詞・節 | 3 | 名詞節 whether、時 as soon as、譲歩 even if |
| 関係詞 | 3 | 関係代名詞、関係副詞、複合関係形容詞(whichever) |
| 仮定法・助動詞 | 3 | 仮定法過去完了、had better、might have done |
| 文型 | 2 | SVOO(buy/guarantee) |
| 比較 | 2 | 最上級、ラテン比較(superior to) |
| 倒置・特殊構文 | 2 | 譲歩の倒置(as)、hardly…before |
| 準動詞 | 2 | 動名詞(enjoy doing/look forward to -ing) |
近年の変化:大問Iからイディオムが消えた
| 分野\年度 | R02 | R03 | R04 | R05 | R06 | R07 | R08 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 前置詞・語法・イディオム | 4 | 4 | 3 | 3 | 0 | 0 | 0 |
| 動詞の形・時制 | 1 | 3 | 2 | 1 | 1 | 3 | 2 |
R06以降、大問Iでは in favor of・anything but 型のイディオム問題が姿を消し、難語彙+構文文法(倒置・複合関係詞・準動詞)に寄っています(各年10問のため傾向は示唆として)。ただしこれは大問Iに限った変化で、イディオム自体は大問IIに残っています(次節)。
大問IIで問われる単元
大問IIの空所(R02〜R06・50問)を「何が問われているか」で分けると、次のようになります。
| 単元 | 問数 | 割合 | 例 |
|---|---|---|---|
| 語彙(内容語の意味) | 31 | 62% | cuisine/recession/compulsory/alleviate |
| 熟語・句動詞・前置詞語法 | 13 | 26% | account for/make up/aware of/has to do with/to name a few |
| 文法・機能語(時制・関係詞・接続詞など) | 6 | 12% | has been changing/whose/what/that |
中心は語彙ですが、熟語・句動詞も毎年1〜4問出ます。大問Iでイディオムが消えたのとは対照的に、大問IIでは残っており、R06は最多の4問(rise by・No wonder・mess with・to name a few)でした。空所の正解が句動詞の前置詞(account for の for、make up の up、goes off の off)になる形が定番で、答えの単語自体は易しくても、その熟語を知らないと選べません。長文中なので、前後の文脈からも絞り込めます。
文法・機能語は1割ほど。関係詞 whose/what、接続詞 that、時制 has been changing など、大問Iで問う文法を長文の中で確かめる形です。
長文のテーマと出典
長文(R02〜R06)のテーマを並べると、大問II(長文空所・各年4本)は時事・教養が満遍なく出ます。言語・教育・心理、文化・食・歴史、環境、健康・医療、社会・経済が各15〜20%で、ジャンルの偏りはありません。素材は Breaking News English・VOA Learning English・The Conversation「Curious Kids」 など、学習者向けにやさしく書き直した短い記事(1本100〜140語)が中心です。
いっぽう大問III(下線部和訳)は航空テーマが本命。5年中4年が航空がらみ(旅客機の座席安全・飛び恥と航空のCO2・機内の酔客・飛行機雲の気候影響、残る1年はCOVID渡航緩和)でした。しかも素材の質が大問IIと違い、一般読者向けの“本物”の記事を長め(366〜740語)に1本。The Conversation の本記事・AP通信・openDemocracy・英王立航空協会(RAeS)のレポートなど、やさしく薄めていないぶん構文が硬い。和訳は記述式で“なんとなく”が効きません。evacuation(避難)・contrails(飛行機雲)・emissions(排出)・turbulence(乱気流)といった航空の語彙に慣れ、構文ごと正確に訳す練習をしておくと差がつきます。
各年の具体的な出典(大問II・IIIとも)と大問IIの正解は、専用ページ英語長文の出典にまとめています(このページは“分析・全体像”、出典の詳細はあちら、と役割を分けています)。
小ネタ:綴りは英米が混在
長文は出典をそのまま使うため、英国綴りと米国綴りが混在します(behaviour/behavior、organisation/organization、aeroplane/airplane)。BBC・Guardian系(英)かVOA・AP・NASA系(米)かで変わるだけ。解答はマーク式+和訳なので綴りで減点はされませんが、両方知っておくと読むとき楽です。
対策の進め方
- 文法を落とさない:時制・準動詞・関係詞・仮定法・倒置(
Difficult as it might be)・複合関係詞(Whichever)。航大が繰り返し問う型は決まっています。各年の解説(下のリンク)で型を確認 - 準1級の難語彙+落とせない構文で差をつける:近年の大問Iは難語彙と構文(倒置・複合関係詞・準動詞)が中心。
in favor of・anything but型のイディオム・群前置詞は大問Iでは出題が減りましたが、大問IIでは毎年出ます(大問IIで問われる単元)。単独の丸暗記より、長文の中で熟語の前後関係を読めるようにしておくと効率的です。 - 1級レベルは捨てる:
diatribe・feud・placidなどは数%。1問のために時間を使うより、文法と準1級を固める - 長文はやさしい英語ニュースを多読:本文は2級で大半読めるので、伸ばすべきは「速く正確に」。英語長文の出典で挙げた系統(VOA Learning English・Breaking News English・The Conversation など)を日課に
準1級の語彙、何で覚える?
順番が大事です。いきなり準1級の難単語に行かないこと。
まず土台:ターゲット1900・システム英単語 などの基本単語帳(大学受験の標準=英検2級レベル)を1冊仕上げる。長文の本文は2級語彙で約9割カバーできるので(前掲)、ここが固まる前に難単語へ手を出しても費用対効果が悪い。多くの人はまずこれで十分です。
土台ができたうえで、準1級ゾーン(=差がつく層)を重ねるか判断します。基礎が固まっていて、過去問で難語に手こずる人は上積みを。残り時間で使い分け:
- 計画的に早めから重ねる:『出る順で最短合格!英検準1級単熟語EX』(ジャパンタイムズ出版)。約2,400句の網羅型。量が多いので数か月前から。
- 直前に上位だけ重ねる:関正生『大学入試英単語 SPARTA 3(mastery level・1,000語)』(かんき出版)。SPARTAはレベル1〜3制で、レベル3が最難関(ターゲット1900・システム英単語・鉄壁の先の層)。1か月で1,000語を回す設計なので、直前に“差がつく語”だけ集中したい人に。
※EX・SPARTAはあくまで上積み。熟語・語法は大問Iでは出題が減っていますが、大問IIの長文では文脈で問われるので、語彙帳の熟語パートや長文多読で軽く触れておけば十分です。
年度別の解説(大問I)
各年度の大問I(語句)全10問の正解と、文法・語彙のくわしい解説はこちら。
過去問本体(長文を含む)の入手方法は英語の過去問の著作権の部分を見る方法、ほかの科目もあわせて過去問解説の一覧からどうぞ。
※語彙レベルはSVL12000(アルク)を基準に、CEFR-J Wordlistと出現頻度で裏取り・補正した独自集計です。英検級との対応は目安であり、公式の基準ではありません。誤りや別解にお気づきの場合はお問い合わせからご指摘ください。
